ワインレッドのスウェードの、ふかふかで身体を包み込むようなソファ
ぼくはいつもそこに沈むくらい深く腰を落ち着けることにしている
よく素敵なひとがぼくの目の前を通り過ぎて
よく甘い焼きたてのマフィンの香りがぼくを誘って
よく一人ぼっちの寂しがりやのおばけがぼくを惑わせて
おしりがむずがゆくなってどうしようもなく立ちたくなるけど
ぼくは知っている
ここに座っていれば、ぼくは世界を見れる
ここに座っていなければ、ぼくは世界にばらばらにされてしまう
一人がけのソファで、自分の体温に暖められながら
まだまだぼくは、待たなければならない
ぶくぶく太って、このソファが窮屈になるまで。